純白な夏服を着て立っている

「ほら、とうとうつかまえたぞ! もう、けっして離さないから。いいかい、もう決して離さない!……それにしても、この巴里で出会うなんて! ほんとうに夢のようだね」 少女は大きな石の階段の第一階に、純白な夏服を着て立っている。その下のほうに重厚な筆蹟で献辞らしいものが二三行ばかり書きつけてあるのだが、竜太郎には一字も読むことが出来ない。どんなことが書いてあるか知りたくなった。 ソルボンヌ大学にダンピエールという東洋語の先生がいる。その先生に読んで貰おうと思いついた。 教授室へ入って行くと、折よくダンピエール先生がそこに居た。 先生は写真を受け取ってその文字を眺めていたが、眼鏡を額のほうへ押しあげながら、竜太郎のほうへふりかえると、「これは、リストリア語だね。……残念だが、ぼくには読めませんよ。……しかし、大したことはない。リストリアからヤロスラフという若い留学生が一人来ているから、それを呼んで読んで貰おう」 間もなく扉を開いて、十九歳ばかりの痩せた、敏感そうな少年が入って来た。 ヤロスラフは写真を受け取ってチラとその主を一瞥すると、たちまち硬直したようになって、やや長い間、眼を伏せて粛然としていたが、やがて、物静かに、口を切った。「ここには、こんなふうに書いてあります」

[#ここから3字下げ]神の御思召あらば、リストリア王国を統べ給うべき エレアーナ王女殿下[#ここで字下げ終わり]

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