入口に近い座席で

    七

 車室には、うす暗い電灯がひとつだけ点り、ムッとするように粗悪な煙草が濠々とたちこめていた。 床の上には腸詰の皮や、果物の芯や、唾や、煙草の吸殻などが、いたるところに飛び散ってい、汽車が揺れるたびに、そこからひどい匂いがきた。 入口に近い座席で、剽悍な顔つきをした三人の青年がブダ語...

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あの薄情な恋人の戴冠式の行列

「……行こう。……あの薄情な恋人の戴冠式の行列を見に、マナイールへ行こう!……街路樹の蔭からでも、よそながら、ひと眼見てこよう。たぶん、それで思いが晴れるだろうからな」 竜太郎は書机のところへ駈けて行って汽車の時間表を探し出し、あわただしく頁をひるがえして「経伊特急《サンプロン・オリアン・エクスプ...

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あの夜の少女

 と、すると、あの夜の少女は、やはり、リストリアの王女だったと思うよりほかはないのであろう。 竜太郎は、悒然とした顔つきで椅子から立ち上ると、部屋の端のほうまで歩いて行き、壁に貼りつけられた地図をしみじみと眺める。 リストリア王国は、ルウマニヤとチェッコ・スロヴァキヤに挾まれた群小国の間にぽっち...

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