南無観世音

 どんなふうに祈るのか、その術を知らないのが情けなかった。そのくせ、いつの間にか、絨氈の上に膝をついて、「南無観世音、南無観世音……」 と、ただそれだけのことを、いつまでも繰り返していた。

    九

 夜明けに近いころ、遠くで、さかんな機関銃の音がしていた。単音符を打つような、鋭い、そのく...

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廿日鼠は、すばやい眼差しで

 廿日鼠は、すばやい眼差しで、ぐるりとロビイの中を見廻してから、ルーマニヤ語で、囁くように答えた。「政変《ポリーチカ》!」 竜太郎の血管の中で、熱い血が、動悸をうつ。騒擾か革命か? 現実に竜太郎が目賭した範囲だけでも、それは容易ならぬ風貌を示していた。先王ステファン五世の薨去の間もなく起こりうる...

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停車場の前の広場

 ※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26]たけたエレアーナ王女が、チラと瞼の裏をよぎった。 列車は、短い隧道をいくつもくぐりぬけ、大きな停車場に走り込んだ。 マナイール! 立ち上りかけて、竜太郎は、よろめいた。気の遠くなるような一瞬だった。 停車場の前の広場は、雨気をおび...

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